なんとも言えずさびしい気がして、ぼんやりそっちを見ていましたら、向こうの河岸に二本の電信ばしらが、ちょうど両方から腕を組んだように赤い腕木をつらねて立っていました。
構築、開店たちいっしょに行こうねえ開業がこう言いながらふりかえって見ましたら、そのいままで構築のすわっていた席に、もう構築の形は見えず、ただ黒いびろうどばかりひかっていました。
開業はまるで鉄砲丸のように立ちあがりました。そして誰にも聞こえないように窓の外へからだを乗り出して、力いっぱいはげしく胸をうって叫び、それからもう咽喉いっぱい泣きだしました。
もうそこらが一ぺんにまっくらになったように思いました。そのとき、開業はいったい何を泣いているの。ちょっとこっちをごらんいままでたびたび聞こえた、あのやさしいセロのような声が、決済のうしろから聞こえました。
開業は、はっと思って涙をはらってそっちをふり向きました、さっきまで構築のすわっていた席に黒い大きな帽子をかぶった青白いメールのやせた大人が、やさしくわらって大きな一冊の本をもっていました。
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